漫画家のみうらじゅんさんって、日本で最も個性的な仕事をしてるように思ってました。
ゆるキャラブームや仏像ブームの火付け役で、自分の中だけで流行ってることを「マイブーム」と呼び、1997年には流行語大賞をゲット。自分がやりたいことを、やりたいようにやって、仕事にしてるように見えて、とてもうらやましく、
みうらじゅんみたいな仕事がしたいなぁ。
常々、そう思ってたところ、そんなみうらさんが、自分の仕事について書いてる本を見つけました。
という本です。
アマゾンの内容紹介によると「みうらじゅんの仕事術」を公開し、丁寧に解説してくれる「好きなことを仕事にしたい」人に贈るビジネス書とのこと。
好き勝手やって仕事にする方法とは、どんなものなのか?
興味津々で、早速、読んでみたのですが、良い意味で裏切られました。
好きなことを仕事にするのではなく、
仕事になりそうなものを好きになる
みうらさんは、決して、最初から好きなものだけを仕事にしてるわけでもなかったのです。
「天狗」や「(おもちゃの)ゴムヘビ」や「海女」といった、みうらさんの非常に個人的とも思えるマイブームを仕事に結び付けてきても、決して、それらが最初から好きだったわけではないようです。
ゴムヘビもそもそも好きだったものではありません。すべて、「私はこれを絶対好きになる」と自分を洗脳したのです。
出典:みうらじゅん『「ない仕事」の作り方』(以下の引用では全部)
好きどころか、第一印象が悪いものや嫌なものも、好きになるようにしてたようです。
第一印象が悪いものは、「嫌だ」「違和感がある」と思い、普通の人はそこで拒絶します。しかしそれほどのものを、どうやったら好きになれるだろうかと、自分を「洗脳」していくほうが、好きなものを普通に好きだと言うよりも、よっぽど面白いことになるからです。
つまり、わがまま放題に自分の好きなもの、好きなことを仕事にしてたわけじゃなく、自分だけでなく他人も巻き込んで「面白いこと」になるように、好きでないものも好きになるよう努力をしてたのですね。
「私」のためではなく、「対象」のために仕事をする
みうらさんの仕事は、わがままに、自分の好き勝手に、やりたいことをやりたいようにやって自己主張し、自分の個性を発揮してたのではないようです。
私が何かをやるときの主語は、あくまで「私が」ではありません。「海女が」とか「仏像が」という観点から始めるのです。
つまり、「私」ではなく、面白いことになりそうな対象に愛を捧げてたのです。
何かをプロデュースするという行為は、自分をなくしていくことです。自分のアイデアは対象物のためだけにあると思うべきなのです。
仕事の極意は、「自分探し」ではなく「自分なくし」
ゆるキャラや仏像をプロデュースした みうらさんの仕事に限らず、すべての仕事は、「何かをプロデュースするという行為」と言えるでしょう。どんな仕事も、商品かサービスをつくって(プロデュースして)提供することになるからです。
しかしそこで自己主張をしてしまうと、世の中からすぐに「必要がない」「欲しくない」と気づかれてしまう。
そして、どんな仕事でも、「オレはこれがやりたい!」「オレはこうしたい!」という自分の欲求だけに囚われていると、仕事の中身や対象が、お客様(や上司)にとって、「必要だ」とか「欲しい」とか感じてもらえるかどうかが、分からなくなりがちです。
「自分探し」をしても、何にもならないのです。そんなことをしているひまがあるのなら、徐々に自分のボンノウを消していき、「自分なくし」をするほうが大切です。自分をなくして初めて、何かが見つかるのです。
実は、仕事にとって、「自分」というのは邪魔にさえなるのです。仕事を通じて提供する商品やサービスを、お客様(や上司)が必要だと思って、お金を払ってもらえるかどうかが、仕事が成立するか否かの条件であって、自分の私的な欲求は、それを見えなくしてしまう。だから、「自分をなくして初めて、何かが見つかる」のでしょう。
自分に合った仕事探しは「私欲」でなく「利他」の視点で
「自分探し」から「自分なくし」へ。この関係を、私なりに図にしてみました。
「本当にやりたいこと」や「本当の自分」を探す「自分探し」や、見つけた自分の「夢」や「自己実現」といったこと自体は、単なる「私欲」であって、それを達成したメリットは、自分だけが得られるものです。他人にとってはどうでもいいことです。どうでもいいことには、お金を払う人はおらず、仕事にもならないのです。
しかし、他人にとって役立つものやこと(商品やサービス)ならば、それを必要とする人や面白いと思う人が、お金を払ってくれます。その商品をつくったり、サービスを提供したり、質を高めたり、より便利にしたりした人に、その対価となる報酬が支払われ、仕事になります。
「プロ野球選手になりたい!」「メジャーリーガーになりたい!」そんな自分の私欲である夢を実現しただけで、多額の契約金をもらえる野球選手は、世の中のごくごく一部の特殊な人たちであって、99.99%の人は、そんなことはありません。
そんなプロ野球選手の契約金でさえも、プロとしてチームに貢献し、ファンが喜ぶ活躍に対する期待を込めた前金であって、実際には活躍できず、他人や社会に貢献する仕事ができなければ、「契約金泥棒!」と言われて非難されてしまいます。契約金が、個人の「夢」のために支払われたように見えても、実際は、やはり利他的な仕事(への期待)に対して支払われてるんですね。
「やりたい仕事」の見つけ方
「有名レストランのシェフになりたい!」「旅行会社で働きたい!」そんな夢を実現させただけでは、誰もお金を払ってくれません。当たり前のことですが、お客様が喜ぶ料理を作ったり、お客様が楽しめるツアー商品を提供したりして、はじめてお金がもらえ、仕事になるのです。
夢を持つのならば、
「(自分が)有名レストランのシェフになりたい!」ではなく
⇒「お客様が感動できる料理を作りたい!」
「(自分が)旅行会社で働きたい!」ではなく
⇒「お客様が一生良い思い出となるようなツアーを提供したい!」
というように、「私欲」ではなく「利他」に基づく夢とすることで、他人にとっても価値があり、お金を払うに値するものとなります。
「自分なくし」をして、自分の私欲を消してみて、「お客様が感動できる料理を作りたい!」「お客様が一生良い思い出となるようなツアーを提供したい!」というような利他的な夢を実現したいと思うのなら、それこそ「やりたい仕事」です。みうらさんが言う「自分をなくして初めて、何かが見つかる」というのは、そういうことだと思います。
「やりたい仕事」で「できる仕事」が「自分に合った仕事」
あとは、その「やりたい仕事」が自分の能力とマッチした「できる仕事」であれば、「自分に合った仕事」と言えるでしょう。
とは言え、仕事を始めた最初から、その仕事を一人前にできることは、ほとんどないでしょう。今はできないけど、努力すればできるようになる仕事もあれば、一生努力し続けてもできない仕事もある。そこを見極めることも必要です。
↓3000年の歴史が導いた「良い仕事」の10条件