3000年の歴史が教えてくれる「良い仕事」の10条件

良い仕事に就きたい、良い仕事がしたい…よくそう思ったり、言ったりしますが、「良い仕事」って何でしょう?

それに答えてくれる本が、本棚の奥に眠ってました。

杉村芳美『「良い仕事」の思想―新しい仕事倫理のために』という本です。絶版になってて、今やアマゾンで1円で売ってます。しかし、改めて読むと、仕事の本質を教えてくれる良書だと感じました。

3000年の歴史が導いた「良い仕事」の10条件

この『「良い仕事」の思想』では、初めての人類アダムがエデンの園で働き始めた聖書の物語や、ギリシャのソクラテスの哲学などに始まり、現代の産業社会に至る人間の仕事に関する考え方の3000年の歴史を丁寧に追っています。

アダムは、禁断の果実を食べてエデンの園を追放される前は、農業と管理人の仕事を神様にまかされてたんですね。イエス・キリストは大工の仕事をしてたし、そもそも神様自身、6日間、天地や生物や人類を造る仕事をして、7日目に休んだって話から、聖書が始まります。

現代の仕事に関係なさそうな、そんな話も、実は現代人の仕事観に大きく影響してるってとこころは、長くなるので省略しますが、著者の杉村芳美氏が最後の章に「良い仕事」の10条件をまとめてくれています。

それを、私なりに解釈してみます。

「良い仕事」の条件

  1. 仕事に意味が見いだせる
  2. 仕事に対する真剣で責任感ある態度がある
  3. 他人に頼らず生活していける収入がある
  4. 他人や社会に貢献する
  5. 善い生き方と重なる
  6. バランスのとれた生活ができる
  7. 仕事そのものが魅力的である
  8. 個人を成長させる
  9. 個人を超える価値観につながる
  10. 主体的に良い仕事を求めて、得られる

1. 仕事に意味が見いだせる

「意味ある仕事がやりたい!」「無意味な仕事はやりたくない!」

誰だって、当然、そう思うのではないでしょうか。

意味が見いだせる仕事は「良い仕事」の条件だろうし、意味が見いだせない仕事は、到底、「良い仕事」だと思えません。

しかし、要注意なのは、「意味がある仕事」かどうかではなく、「意味が見いだせる仕事」かどうかが大事ということです。

コピー取り、お茶くみ、車を数える交通量調査、ベルトコンベアで流れて来る製品の検品…等々、とても単調に思える仕事って、いろいろあると思いますが、そういう仕事に意味が見いだせる人もいれば、そうでない人もいます。

最初は意味がわからなくても、やってるうちに意味が見いだせる仕事も多いでしょう。

最終的には、どんな仕事にも意味があると発見するでしょうが、アルバイトではなく、自分がプロとして一生やっていく仕事については、ある程度は大きな意味を見い出せそうな仕事である必要はあるでしょう。

2. 仕事に対する真剣で責任感ある態度がある

これは、仕事の内容ではなく、仕事をする自分の側にとっての「良い仕事」の条件です。

不真面目にダラダラとやる仕事が、「良い仕事」になるはずがありませんね。

仕事をした充実感や、やり終えた時の達成感を得るためにも、真剣で責任感ある態度が必要です。

3. 他人に頼らず生活していける収入がある

つまり、仕事の報酬や給料としてもらう「お金」も大事ということです。

ボランティアとして働くことは美しく見えるかもしれないけど、もし、ずーっと収入がないタダ働きをしてたら、生活費を誰かに頼らざるを得ません。他人に従属せず、他人に迷惑をかけず、自立した生活をし、ある程度、自由にお金を使うためには、最低限の生活費以上は稼ぐ必要があります。

また、お金のゆとりがないということは、誰かが病気やケガなどで働けなくなって困ったときに、助けてあげるお金もないということです。時には困った家族や他人を助けるためにも、他人に頼らず生活していける収入は必要です。

4. 他人や社会に貢献する

「野球選手になりたい!」「医者になりたい!」「パティシエになりたい!」そんな夢が叶っただけで、人は本当に満足するものでしょうか?

一本もヒットを打てない、ヤブ医者で誤診だらけ、作るスイーツは不味くて高いものばかり…そんなプロ野球選手や医者やパティシエを、評価したり、感謝したりする人(会社やお客様)はいないでしょう。

自分の他は誰一人喜ばず、なんにも他人や社会に貢献しない仕事に就いて、自分では満足し続ける…、なんてことがあり得るでしょうか?

人間には、利己的な本能だけでなく、利他的な本能もあると言われています。

貴方も、誰かのため、社会の何かのために、少しでも貢献したいという気持ちはあるのではないでしょうか。他人のため社会のために貢献できることは、自分の仕事の満足度にもつながる重要な条件です。

5. 善い生き方と重なる

嘘をつかない、一生懸命にやる、時間を守る、責任を持つ、怠惰にならない、他人を不快にさせないような挨拶や会話ができるというような「善い生き方」は、仕事をしなくても、自分で自分を律して、ある程度はできることです。

しかし、仕事をしてお金をもらう立場となると、社会人としての「善い生き方」が、より一層強く求められます。貴方にお金を払う会社やお客様の厳しい目によって、そうでない生き方は正され、鍛えられます。そして、仕事以外の時間でも、一人の社会人として「善い生き方」ができるようになるわけです。

逆に、嘘をついてもよい、一生懸命でなくてもよい、時間を守らなくてもよい、責任を持たなくてもよい、怠惰でもよい、他人を不快にする言葉を吐いてもよい…そんなことが許されたり、勧められたりするような仕事は、「良い仕事」とは言えないでしょう。

6. バランスのとれた生活ができる

家族のために仕事を一生懸命しているつもりが、家族と過ごす時間がなくなり、家族関係が崩壊することは、よく聞く話です。

寝る時間以外すべてが仕事ばかりの余裕がない生活だと、頭も体も疲れ切って、仕事の能率が逆に落ちてしまいます。過労により、心や体の病気になったり、最悪の場合、自殺にまで至ってしまっては、元も子もありません。

会社のために尽くした社員に、何の見返りもない会社では、社員は働く気をなくしますし、会社としても働く気がない社員ばかりとなると、業績が上がるはずがありません。

このように、仕事と余暇、仕事と家庭、個人と組織の間には、適度なバランスが必要です。家族や余暇のために過ごす時間の余裕があることや、頑張った個人に見返りがある組織であることも、良い仕事の条件となります。

7. 仕事そのものが魅力的である

どんなに報酬が大きくても、どんなに社会のために貢献できても、まったく楽しくない、まったく面白くない。そんなつまらない仕事が、いつまでも続くでしょうか?ほとんどの人にとって、そういう仕事を続けることは難しいし、苦行そのものでしょう。

「100%楽しい仕事」なんてものは、おそらくこの世にないと思います。少しでも楽しさや面白さを見つけられて、そのために他の楽しくないことや面白くないことも我慢できるような仕事が、良い仕事と言えるでしょう。

8. 個人を成長させる

私自身は、特別、仕事が好きなわけではなく、「仕事をしなくて良ければしない方が良い」とまでも思っています。それに、集団行動も苦手で、組織の論理に従うのも好きではないので、就職していた会社を7年で辞めました。それでも、その会社に入って仕事をしたことで、自分のために良かったと思える様々なメリットがありました。

  • いろんなことに責任感が持てるようになった
  • 知らない人とも話せるようになった(コミュ力がついた)
  • 他人の感情を無視しなくなった(「ヤな奴」度は下がった?)
  • 多くの人間の表と裏を見る力がついた(仕事で利害が絡むと人は変わる)
  • 仕事上の様々なスキルが上がった(他人の評価と厳しい目で磨かれる)
  • 社会の表面では見えない裏方の働きがわかった(社会構造の一部が見える

小学校、中学校、高校、大学と、学生生活の中でも多くのことを学びますが、社会や会社では、学校とは違う実践的で現実的な多くのことを広く深く学べます

一方で、そうでない仕事もあるわけで、個人を成長させる仕事に就くことは大事だと実感します。

9. 個人を超える価値観につながる

会社などの組織や他人(お客様)のために働いてお金をもらうのが仕事ですから、完全な自己中心主義では仕事が成立しません。どんな仕事も、何らかの意味で社会に貢献し、それに対して社会が会社や個人に報酬をもたらしています。

たとえ、芸術家(アーティスト)であっても、その作品を良いと評価してくれる人がいて、お金を払ってくれなければ、プロの芸術家とは言えません。芸術家が、どんなに特殊で個性的な価値観を持っているように見えても、どこかで社会の価値観とつながり、他人が共感したり、評価したりするからこそ、仕事になっているのです。

そして、社会の価値観につながって、他人が共感してくれたり、評価してくれたりする仕事は、やりがいがある仕事であり、良い仕事とも言えるでしょう。

10. 主体的に良い仕事を求めて、得られる

1~9の条件は、大なり小なり、どんな仕事にも備わっていることが多いのですが、備わっていても、個人が主体的にそれを求めないと得られないことも多いのです。

例えば「1.仕事に意味を見い出せる」について。どんなに個人が努力しても、全く意味を見つけようがないような仕事もあるかもしれませんが、その一方で、個人が努力をすれば意味を見つけられる仕事も多いでしょう。

個人の側 ⇒ 主体的に1~9の条件に合う仕事をしようとする
仕事の側 ⇒ その個人の求めに応じたものを与える

というように、個人の側の主体的な姿勢に、仕事(会社)の側がこたえてくれる場合に、その仕事が「良い仕事」となるのであって、個人と仕事の両方が、互いの期待に応える必要があります。

「良い仕事」の10条件を、就職・転職や今の仕事に活かす

1~10の条件は、個人の側の姿勢に重点に置いたものもあれば、仕事や会社の側に重点を置いたものもあります。しかし、どれも、個人と仕事の両方の条件がマッチしなければ、「良い仕事」にはなりません

「2. 仕事に対する真剣で責任感ある態度がある」としても、そういう態度が評価される仕事でなければ、良い仕事にはなりません。

「3. 他人に頼らず生活していける収入がある」ように見える仕事でも、真面目に働く姿勢がなければ、早々にリストラの対象になる可能性があります。

「4. 他人や社会に貢献する」ような仕事であっても、個人の側に他人や社会に貢献する意思が欠けていれば、それも良い仕事にはなりません。

意味を見い出せたり、社会への貢献を感じたり、面白くなったりするような仕事(会社)かどうかは、個人ごとに違って相性もあるので、実際のところは、やってみないとわかりません。

しかし、ここでまとめた1~10の条件に合いそうな仕事かどうか、仕事や会社に関する情報を集め、イメージしながら予測してみることで、良い仕事を見つける確率は上がるのではないでしょうか。

また、既にやっている今の仕事についても、1~10の条件に照らし合わせて、現状で「良い仕事」かどうかを判断することもできます。自分の側に欠けているものがあり、自分の姿勢を主体的に改善すれば「良い仕事」になるものもあるだろうし、じっくりと時間をかけて調べたり、考えたり、他の社員に相談したりしても、どうしても個人では改善しようがないと感じるのなら、転職すべきサインかもしもしれません。

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