前々回は、転職先の会社や他人の紹介などから棚ぼたのように降って来る「求められる転職」が、日本の転職募集の3分の1も占めているというお話でした。
前回は、自分から積極的に仕事を求めていく「求める転職」の方が、他人だより、運だよりに見える「求められる転職」よりも、難しい問題を抱えているというお話でした。
といっても、会社や他人の方から「求められる転職」を、他人まかせ、運まかせに、ただ、待ってればよいのでしょうか?
前回に引き続き、山口周氏の『天職は寝て待て』をヒントに、私なりに解釈して考えてみましたが、どうやら本のタイトル通りに、転職(天職)は寝てるだけでは転がり込んでこないようです。
しかし、転職の運を引き寄せるための方法があります。(※以下は、私なりに解釈したり、付け加えたりして、整理しています)
「いい偶然」が、仕事を決める
アメリカ・スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授は、アメリカのビジネスマンのキャリア形成のきっかけの80%が「偶然」であることを明らかにしたそうです。
なので、前回書いたような「自己実現型 職探し(求める転職)」のように、長期的な目標(理想の仕事)を設定して、それに向かって頑張って努力するのは無意味であり、努力するなら、「いい偶然」を引き寄せるための計画と習慣のために努力すべきとのこと。
「いい偶然」は単に待っているだけでは起こらず、招き寄せるための日々の習慣が重要である
山口周『天職は寝て待て』
「いい偶然」を引き寄せる5つのポイント
このクランボルツ教授は、「いい偶然」を引き寄せるために、5つのポイントをあげています。
- 好奇心
- 粘り強さ
- 柔軟性
- 楽観性
- リスクテーク
1.好奇心
「いい偶然」をいかすためには、
- 好奇心から様々な人々と出会う
- 好奇心を持って仕事に取り組む
- 多様なテーマへの好奇心を持つ
というように、様々な偶然を呼び起こむ「種まき」として好奇心が必要です。
また、来た「いい偶然」に反応するためには、未知のものだからと言って怖がらず、未知のものへのポジティブな好奇心が必要です。
2.粘り強さ
「いい偶然」でチャンスをつかんでも、未知の新しい仕事は、最初からうまくいくことは、なかなかありません。それでもある程度長く続けることで、新しい仕事のコツやポイントがわかり、面白さや楽しさもわかってきます。それまでは、苦しい日々が続きますが、それでも続ける粘り強さが必要です。
新しい仕事がうまくいき、面白さや楽しさがわかる前にやめてしまうと、折角つかんだチャンスを無駄にしてしまうのです。
3.柔軟性
「私は〇〇だけをする!」という強すぎる信念や「〇〇は□□であるべきだ!」という固定観念に囚われていると、思いもかけない新しいチャンスをつかむことはできないし、チャンスをつかんで新しい仕事に就いたとしても、それまでの考え方では対応できない未知の状況に対応できず、チャンスを活かせません。
想定外の事態や状況の変化に対応できる柔軟性は、チャンスをつかむのにも、つかんだチャンスを活かすのにも重要です。
4.楽観性
野球で、九回の裏ツーアウト満塁、ヒットを打てば逆転サヨナラ勝ちだけど、アウトなら負けとなる場面。
「打たなきゃ、最後のバッターになる。打たなきゃ、オレの責任だ。もう終わりだ~!」
と悲観的になる選手もいれば、
「オレが打てば、サヨナラ勝ちで、オレがヒーローだな!よ~し、やったるでー!」
と楽観的になる選手もいるようです。
現実には、そこまでの劇的なシーンはあまりないのですが、それでもいろんなピンチが訪れます。
「失敗しても死ぬことはないし、失敗も良い経験だ。成功したら、もうけもん!」
と楽観的に考えて何事にもチャレンジすることで、「いい偶然」のチャンスは増えますし、成功率そのものも高まるでしょう。
人間の性格は変えられないのですが、どんな失敗も、どんな逆境も、どんな苦労も、どんな辛さも、自分が成長する機会だと考える楽観的な「考え方」を続けていれば、楽観性は身につきます。
5.リスクテーク(チャレンジする勇気)
チャレンジには、必ずリスク(危険や損する可能性)があります。リスクを計算して、わかった上で、それでもチャレンジする勇気がなければ、新しい未知のチャンスをつかむことはできません。
100%危険がない安全なことを日々続けようとするかぎり、「いい偶然」が訪れ、チャンスが巡って来ても、そのチャンスを活かすことができないということです。
チャンスを「増やす力」「つかむ力」「乗りこなす力」
「いい偶然」、つまり運を味方につけて「求められる転職」をするためには、
- チャンスを呼び込む(増やす)
- チャンスをつかむ
- チャンスを乗りこなして大きく育てる
という3つのステップそれぞれで、クランボルツ教授の5つのポイントやその他の力が必要になってきます。
1.チャンスを呼び込む(増やす)
「いい偶然」を招きよせるために重要になってくるのは、「人脈の広さ」と「信用の深さ」の掛け算です。
山口周『天職は寝て待て』
どんなに人脈が広くても、信用がなければ、「あの人にうちの会社に来てもらおう」とか「あの会社に紹介しよう」と思われません。逆に深い信用があっても、人脈が狭ければ、チャンスは少なくなってしまいます。
人脈力と信用力の両方を育てる必要があるわけです。
そのためには、信用はあるけど数が少ない「親友」ではなく、数が多いけど信用できるかどうかは知らない単なる「知人」でもない、「親友未満、知人以上」がカギとなります。
あなたの仕事を信用する「親友未満、知人以上」の人たちを増やすには、どうしたらよいか?
「目の前の仕事を誠実にこなす」「周りにいる人に誠実に対応する」という姿勢を積み重ねて、「一緒に仕事をしたい」「安心して紹介できる」という人物になるしかないようです。
あなた自身が「大丈夫」と思えるような人物を思い浮かべて、あなた自身をその人物に近づけていくということしかありません。
山口周『天職は寝て待て』
そうやって、いつかどこかで、会社で人手が足りなくなった時や、誰か紹介してくれと言われた時などに、あなたの顔が思い浮かぶチャンスが増えていくわけです。
あなたに仕事をもたらす人が、誰になるかはわからないので、誰に対しても裏表がないことも大事になってきます。
2.チャンスをつかむ
そうやって、転職のチャンスがやってきたときに、今度は、そのチャンスをしっかりつかむ必要があります。その時に必要となるのは、クランボルツ教授の5ポイントのうち、好奇心、柔軟性、楽観性、リスクテークです。
好奇心の幅が大きく、柔軟性があれば、今までと違う新しい分野、テーマ、職種、地域などにこだわらず、受け入れるチャンスの幅も大きいでしょう。
楽観性があれば、不安のあまり、折角のチャンスを取り逃すこともありません。
そして、当然、リスクを知った上でチャレンジする勇気は、転職に不可欠でしょう。
3.チャンスを乗りこなして大きく育てる
チャンスをつかんで、転職した後、そのチャンスを活かして、しっかりと自分にとって「良い転職」にするためには、新しい仕事や環境に慣れずに結果が出せず、つらくて苦しい時期を乗り越えて、コツやポイントをつかんで面白さや楽しさがわかるまで、我慢する粘り強さが必要です。
失敗や逆境や苦労も、自分が成長する機会だと考える楽観性も必要です。
また、今までの仕事で持っていた固定観念や自分のやり方や考え方に囚われずに、新しい仕事と新しい環境に対応できる柔軟性も必要です。
思ってた仕事と全然違うし、面白くないし、自分に合わないから辞める!
ではなく、新しい仕事と自分の折り合いをつけて、なんとか乗りこなし、会社や社会に貢献しつつ、自分も仕事に合わせて成長させていくことができて、「良い転職」だと言えます。
転職先の会社や他人の方から「求められる転職」は、棚ぼたのように「転職先が転がり込んで来てラッキー!」で終わりではないというわけです。
「求める転職」でも「求められる人材」へ
3回にわたって、「求める転職」の難しさと「求められる転職」のポイントをまとめてきましたが、自分から「求める転職」であっても、「求められる転職」のポイントに合致した「求められる人材」が、良い転職を得るために非常に有利です。
チャンスを呼び込み、チャンスをつかみ、チャンスを乗りこなして大きく育てる力を持った人は、会社にとっても欲しい人材です。
一方、個人にとっても、前回整理したように、「求める転職」で「理想の仕事」を見つけることが非常に難しい以上、「求められる転職」型の力と姿勢を持つことで、良い転職につながっていくでしょう。